1.《ネタバレ》 映画紹介によれば「環境問題を深くえぐる社会派ミステリー」とのことで、そこに男女の人間関係をからめた構成になっている。場所は「熱帯魚」(1995)や「天空からの招待状」(2013)でも見えた西南部の海岸地方が中心になっている。
物語としてはミステリー調の展開だが、最後がありきたりな決着の付け方になっていたのは感心できない。ちなみに最初から胡散臭く見える奴は怪しいと思って間違いない。
環境問題に関しては前記「天空…」でも思ったことだが、日本人の感覚では20世紀的な印象のある公害問題と、どちらかというと21世紀的な環境活動団体が同時に存在するのは変な気もするが、それが現地事情の反映であれば仕方ない。あからさまな公害などは環境規制をちゃんとやってもらえば済むことである。
また社会的な面では、政財界を中心に今も存在する社会悪を告発しているようでもある。しかしエンドロールには台湾映画でよく見る「文化部 MINISTRY OF CULTURE」の名前が普通に出ており、また戦後日本の感覚だと権力側になる各地の市政府や警察局なども協力しているので、あまり尖った社会派映画という感じはしない。ちなみに解説によると現地の司法制度は国民にあまり信頼されていないとのことだが、マスコミはまだしも信用があるということらしかった。
登場人物については残念ながら誰にも共感できない。既にあっちの方へ行ってしまった感じの人物に、観客として惹かれるものが全くないのは困る。ラストは感動を誘う場面だろうが、自分としてはちゃんと前を見て運転しろと言いたくなった。なおむやみに残酷な殺され方をする人物がいたりするので、そういうのを好む観客には受けるかも知れない。検察官だけでなく新聞記者など、命知らずの人間ばかりで困ったものだと思わされた。
全体的に真面目な映画ではあるが通り一遍な印象で、正直それほど心に刺さるものはなかった。
ところで題名は意味不明だが、英語のHigh Flashとは引火点が高い、つまり引火しにくいという意味らしい。引火させるには温度を上げて点火する必要があるわけだが、社会も人もいわば引火点が高いので、人が死ぬくらいのことがなければ何も動かない、という皮肉だとすれば、確かにそれはそうだと思わせるものがある。またラストの空撮が冒頭と同じに見えたのは、それでも何も変わらないとすればそれでいいのか、という問いかけかも知れない。何にせよ民主主義だからこそ作れる映画ではある。