1.《ネタバレ》 予備知識ゼロで見始めたので、大澤誉志幸さんの名曲「そして僕は途方に暮れる」のイメージとはほど遠い「ダメ人間」物語に大きく戸惑ってしまいました。名曲モチーフの映画にありがちな、ノスタルジーの欠片もないのは、ある意味潔い。
ジャニーズ出身の藤ヶ谷太輔さんには全く演技派のイメージはなかったので、周りが「イラッ」としはじめているのにそれに全く気づかないどころか、イライラを加速させるだけの表情・態度・佇まいの表現が絶妙で、もう俳優自身がダメ人間にしか見えないのも凄いことだと思います。一方で、彼の周りには個性的な演技をする役者さんが揃っているので、その演技合戦も見るのは楽しい。とくに、毎熊克哉さんとか野村周平さんとか本当に楽しそうだし、トヨエツさんと原田美枝子さんはさすがの存在感でした。久々の香里奈さんのキレっぷりもよい。
ただ、物語のパターン自体が見えてくると、物語的な推進力が弱くてちょい退屈な感じも。ちょっとだけ「いい雰囲気」にはなるけれども、主人公が決定的に変わるわけでもなく、むしろ状況はもっと悪くなり、かなり突き放したところで映画自体は終わってしまう。その感じが、三浦大輔監督らしいなあとは思いつつも、全体的には気持ちの置きどころがわからないまま、その斜め上を行くキャラクターと物語に、終始戸惑った鑑賞経験でした。