2.《ネタバレ》 このドキュメンタリーは、サリン事件当時のオウム内の状況と信者たち、それを取り巻くマスコミや警察、地域住民が映像に収められている。この映像に映っている信者たちは誠実な若者であり、きちんとした信念の下信仰に励んでいる、意外とまともな人たちだ。対して警察は、因縁をつけ茶番を演じ、無実のオウム信者を公務執行妨害として逮捕する悪人、マスコミは、取材の件で口汚く言い争うチンピラのように映っている。
そして、重要な点として、この作品はマスコミによるオウムの偏向報道というものの上に成り立っている。
当時幼少だった僕はそのマスコミの偏向報道をよく知らないし、オウムについて知っていることといえば、サリン事件を起こした麻原彰晃率いるカルト教団ということだけだ。その程度の知識でもあったから、まだあまり問題ないかもしれない。
問題は今後現れるであろう当時の状況を全く知らない人間が、オウムを知る術としてこのドキュメンタリーを観たときだ。
人間には良い面と悪い面の両面がある。オウム信者も、警察も、マスコミも、人間だからその両面がある。
しかし、このドキュメンタリーはその片面を編集という手段で削り、それぞれを善人と悪人に仕立て上げてしまっている。当時の状況を全く知らない人間がこの作品を観たら、誤解するのではと危惧してしまう。そこにこの作品の「ドキュメンタリーとしての未完成さ」を感じる。
映像に映る誠実なオウム信者も事実である。しかし、 あの サリン事件を起こしたオウムだ。このドキュメンタリーに登場するオウム信者は不自然なほどまともなのだ。
監督である森達也は、当時はオウムに関することでないと金にならなかった、と語っている。
実際はオウムのことはどうでもよく、オウムを通してマスコミや警察の批判を行いたかっただけではないだろうか。