3.《ネタバレ》 この映画を観たのは学生時代、自分を含めて20人ぐらいしか観客がいない名画座でした。マックQが暗殺者を返り討ちにしたシーンで、目撃者が警官に証言するところで「私の名前はジェームズ・カーター…」と言ったところで半分ぐらいの観客が爆笑したんです。その当時は大統領選挙が始まっていて、民主党のジミー・カーターという候補に日本でも注目が集まっていました。ご丁寧に字幕でジェームズをジミーと変えてウケを狙っていたんでしょうが、それがガラガラの名画座で見事に成功したってわけです。余談でした。
『ダーティハリー』のハリー・キャラハン役へのオファーを蹴って後悔することになったジョン・ウェインが、悔し紛れに遅まきながら初の刑事役に挑戦した一編です。舞台はシアトル、お話しは警察内部の麻薬の横流しとそれに気付いて一匹狼になって真相を追及する初老のデカ、まあ70年代の刑事もので良く見かけるパターンです。とうぜんウェインは馬じゃなくカッコよい車(フォード・マスタング?)を乗り回すんですが、なぜか住まいが小型クルーザーだったりして、なんか刑事らしくないキャラです。そしてコルト・ピースメーカーからチェンジした武器はイングラムⅯ10、私もこの銃を始めて見たのが本作でしたが、ただの長方形の箱にグリップをつけただけみたいなアヴァンギャルドなスタイルにはショックを受けたものです。ウェインは慣れない現代劇でしかも初刑事役ということもあってか、どこかぎこちない感じが強かったです。監督がジョン・スタージェスですからあまり盛り上がらない地味なストーリーもそつなく纏めていますが、ラストの海岸でのカーチェイスだけは正直見ものです。地味な絵面かもしれませんが、波打ち際をあれだけ猛スピードで車を疾走させるのは高度な運転テクニックが必須です、良い子は真似しないでね。 良く判らんのが最後の閉め方で、麻薬の横流しは殺された同僚刑事とその妻が主犯という撮り方なんですが、その刑事や愛人を消したのはいったい誰?という当然の疑問があります。これは上司のエディ・アルバートたちが黒幕という解釈しかできないのですが、みんなで仲良くコーヒーを飲んでエンドって、いったいどうなってるの?