3.《ネタバレ》 ローマ帝国の崩壊が180年即位のコンモドゥス帝から始まっているという大胆な仮説には首肯しかねる。崩壊の三百年も前の皇帝に崩壊の濫觴を求めるのは無理なのではなかろうか。
史実のように謳っているが、ローマ帝国という舞台とローマ皇帝の名前を借りただけの創作である。
未婚皇女役を豊満な中年女優が演じている点で興ざめし、まともな悲恋物語として見れない。
コンモドゥスは闘剣試合に夢中で、政治には向かない暗愚な人物とされるが、闘剣場面が一度も登場しないのでどういう人物か推測しかねる。彼の心の内に狂気が宿っていたとして、その原因を少しは示唆してほしいものだ。最終場面で、突如として名乗り出た実の父を刺殺し、平和に暮らすババリアン人を虐殺させ、妹を焚刑に処すよう命じ、大衆の面前でリヴィウスと一対一の死闘を演じる。唐突感が半端ではない。コンモドゥスという人物を理解できるように描いてもらいたい。
対するリヴィウス軍指揮官だが、辺境国に対して融和政策をし、恒久平和を実現しようする先進的人物だ。しかし、その主張を元老院にするは部下まかせで、多くの戦闘場面に登場するので、その人となりと主張と行動が一致せず、ちぐはぐな印象だ。平和を主張させるなら平和的人物として描くべきだろう。少なくとも善人顔の俳優が演じてほしい。
巨大舞台装置や大群衆場面も心動かされるものがない。“見せ方”が尋常一様で、画面が迫って来ないのだ。戦闘場面も群集が騒ぐ場面も無難な仕上がりで、そこそこの迫力が出ているが、度肝を抜く演出はない。どちらも広がりがなく、閉塞感漂う印象を受ける。鑑賞後、時間を無駄にしたとも思わないが、佳い映画を観たという実感も湧かない。どの人物にも感情移入できないのはお墨付きだ。