1.《ネタバレ》 ナタリー・ウッドを主演に据えた『ウェスト・サイド物語』『マンハッタン物語』に続く『物語』三部作の第三弾、というのは冗談でして『ウェスト・サイド』以外は原題に“story”はなく日本の配給会社が勝手につけた邦題で、もちろん映画の内容に関連性はありません。でも『物語』以上に理解不能だったのは『サンセット』で、邦題を考案した人はどこからこの単語を捻りだしてきたのか一度じっくり話を伺いたい(笑)。 というわけで映画のプロット自体は邦題からは想像もつかない『スタア誕生』の様な手垢のついたバック・ステージものです。時代は1930年代(たぶん)でカリフォルニアの海岸でプロマイド屋を営んでいたデイジー・クローバーという15歳の娘がミュージカル・スターとして抜擢され一躍アメリカの恋人的な地位に登りつめるが、わずか2年で芸能界を去るまでがストーリーです。自分は60年代のナタリー・ウッドが大好きなんですが、この映画に出演した66年当時はその魅力が頂点に達していますね。さすがに当時28歳の彼女が15歳の役を演じるのは無理があるんじゃないかと思いましたけど、我の強い少女を違和感なく演じています。まあこういう奔放な女性キャラは素の彼女に近いのでやり易かったかもしれませんけど、この人の視線というか眼ヂカラの強さはずば抜けてます。映画の撮影シーンではウッドのミュージカルパフォーマンスが愉しめますけど、残念ながら唄は吹き替えです。実は『ウェスト・サイド物語』の“トゥナイト”を含めて映画での彼女の歌唱は全て吹き替えなんです、ダンスは素晴らしいんですけどねえ。 なんかこの映画の印象が悪くしてるのは、彼女を取り巻く映画界の面々たちの個性が活かされていないところでしょう。役名が同じで『ファントム・オブ・パラダイス』のスワンのモデルの様な撮影所のボスであるクリストファー・プラマーや母親役のルース・ゴードンはさすがに持ち味を出しています。でもこれが初の大役になるロバート・レッドフォードが、なんかヘンなんですよね。ウッドにちょっかいをかける気障な大スターなんですけど、こいつが何を考えているのかさっぱり意味不明ですし活躍もしません。ウッドと結婚しますが新婚旅行中に失踪してしまい、どこに消えたかと思えば何と男の愛人のもとに逃げてしまったのです。つまりバイ・セクシャルだったというわけですが、いくら駆け出しの頃とは言え天下のレッドフォードがホモのキャラを演じていたとはちょっとびっくりでした。