6.《ネタバレ》 全体的には丁寧な作りで好印象ながら、やはり、あらゆるシチュエーションにおいて、「お約束」と「ご都合主義」ありきの典型的なホラーであるのは残念。
良くも悪くも王道であり、ホラーとしての新しい試みや演出は皆無。「セックスしてるバカップルは殺される」という法則も従来通り。
中盤50分くらいまでの展開に無駄が多く、殺人鬼兄弟を始めとする主要人物の背景描写もあって無いようなもので、時間をかけた割りにキャラが薄っぺらい。
出来るだけご都合主義を感じさせないような作り方を心掛けてはいるようだけど、どうしても突っ込みたくなる部分は多い(地下室から指を出すシーンでも、腕に巻きついてる椅子の部品で鉄格子を叩くとかすればいいのにとか、兄弟の「あと二人で完成だ」発言の意味不明さとか、あれだけの住人が行方不明になっているのに、他の地域にもいるであろう身内や友人などが不審に思わなかったのかとか、三人目の兄弟がいるというバレバレな上に必然性の無いオチとかetc)。
とにかく殺人鬼にダメージを与えたら、殺さないまでも、とりあえず身体を拘束しろっつーのw 死んでるかどうかも確認しないで放置して逃亡って、あれが現実の局面なら絶対にあり得ないでしょ。最低でも猟銃は持っていこうよ~。弾は無くても武器になるし、脅しにも使えるじゃん。他にも、危険なシーンに限って不注意すぎるとか、戦い方が綺麗すぎるとか、そうした典型的な「古き良きお約束」のおかげで徐々にディテールが崩壊していき、結果的にホラー映画としてあったはずのドキドキがイライラに変わってしまう。
ラスト10分くらいの蝋屋敷が熔けていくシーンも見応えはあるが、ここまでいくとホラーというよりはアクション映画の脱出劇みたいで現実味が無く、個人的にはちょっと興醒めしてしまった。
この手の「お約束ホラー」は今後も作られ続けるだろうけど、お約束を優先して形式だけのジャンルに成り下がるか、リアリティとシチュエーションを両立させる事で恐怖の新境地を開拓して行くか。ホラー映画も時代的にそろそろ分岐点かな、と。