1.《ネタバレ》 これが一応『いそぎんちゃく』シリーズのラストとなります。前二作では石田浜子だったヒロイン渥美マリの役名は浜口洋子に変わってますが、役名は同じでも今まで一作ごとに全然違うキャラだったので大した意味はありません。もっと大きく変わったのはヒロインのキャラ付けで、色気たっぷりの銭にがめついたくましい女性というキャラのはずが、そこから“銭にがめつい”という要素がなくなっちゃてるんです。この映画は言ってみればマレーネ・ディートリッヒの『嘆きの天使』を翻案したようなもので、千秋実がエミール・ヤニングスの役柄だというわけです。この二人を取り巻く登場人物たちは単なる背景みたいな意味しか与えられていなく、渥美マリに惚れてひたすらに落ちてゆく牧師・千秋実を追いかけてゆくのがメイン・ストーリーです。東宝の名優・千秋実が軟体動物シリーズに出演しているというのは考えてみればすごいことですが、どうしても彼の演技のほうに眼がいってしまうのはやむを得ないでしょう。ラストで渥美マリに捨てられ、教会の門前で祈りの姿勢のままで固まってしまう演技は秀逸でした。肝心の渥美マリの方は、監督が第一作と同じ弓削太郎であるのにもはや脱ぎもなく、軟体動物シリーズの中では最も印象が薄かったキャラなのは残念でした。