12.《ネタバレ》 -Notorious- “悪名高い”。
ナチのスパイの父とアメリカ人の母とのハーフ、アリシアが、FBIのスパイ活動に協力して、ナチの残党を暴き出す。
タイトルもタイトルだ。戦後間もない1946年。当時のドイツ系アメリカ人は、どんな気持ちでこの映画を観ただろうか?
“アリシアも死にそうになって頑張ってるんだから、他のドイツ人たちもナチ残党の逮捕に協力して、汚名返上しようぜ!”って映画なのか?
なんか海外特派員のときのような空気を感じるけど?
デブリンも最初から、ナチ残党あぶり出しの目的でアリシアに近づいているのが、どうにも感情移入を妨げる。そもそもデブリンのどこに魅力を感じたのかが伝わらない。デブリンとアリシアが恋に落ちると言うより、アリシアを利用する立場のデブリンに良心が邪魔をしてるように見える。例えるなら客を食い物にするホストが、ついつい客に感情移入してしまったように見えてしまう。
そしてFBIはナチを追うために、一般人に結婚までさせるのか。セバスチャンをスパイするアリシアは一生懸命だ。自分の名誉のため、愛するデブリンのため。
あくまで仕事で頑張ってるアリシアに、冷たく当たるデブリン。あんた酷いよ。とても計算とは思えない競馬場のあの態度は、無いわ。嫉妬にしても醜すぎる。再会から短期間で求婚してしまうセバスチャンの方が魅力的に思えてしまう。
後半はサスペンスとして楽しめる。倉庫の鍵を手に入れて、バレずに戻すスリル。アリシアの殺害に至るセバスチャン親子の会話。この親子の力関係は、後のサイコを彷彿とさせる。ワインボトルの一件は雑だった。落として割るのも、適当なボトルに詰め直すのも。けど、アリシアに対するデブリンの行きあたりばったりな態度と重なって、逆に良いかも?
アンダーソンがコーヒーを手にしたときのセバスチャン親子の反応、からの察し。は見事。
アリシアを救出に行くデブリン。ダメだもうデブリンが『金づる女を取り戻しに他店に乗り込むホスト』にしか観えない。でも“圧倒的不利な状況から脱出”な、階段の交渉は見応え満点。
デブリンが脱出の交渉をするために下る階段は長く、仲間に呼び戻されたセバスチャンが登る階段はあまりに短い。ナチの残党に残された命の猶予。
とにかく、デブリン振られろ。