2.メジャーリーグの最大の汚点である、ブラックソックス事件を事実に忠実に描いているのは非常に好感が持てるが、ただ忠実なだけとも言えなくもない。1919年のホワイトソックスが、いかに偉大な選手が揃った、例えば堅守と好打で、このワールドシリーズでも打ちまくったバック・ウィーバーや、今でも軟投派の名投手として名前の上がる、ナックルを決め球とするエディー・シコット、天才的な守備力を持ち、メジャーの外野手の守備記録に現在でも名前を残すハッピー・フェルシュなど、そういう選手個々の凄さに対して詳しく触れられていないのが、あまりにも残念で、そのせいで名選手がわずかな金で野球界を追放される悲壮感が薄い。その他、オーナーと選手の対立だけでなく、当時のホワイトソックスは選手同士の対立が酷かったことに触れられていず、裁判で選手同士が罪をなすり付けあい、隠蔽工作として選手同士で殺す殺さないの脅迫まで行なわれた事実が映画ではカットされているのも深みに欠ける。史実を知るには良く出来た映画だが、娯楽として楽しめる映画ではなかった。蛇足ながら、シューレス・ジョー・ジャクソンが、きちんと左打席に入るってだけで嬉しくなってしまった。