1.《ネタバレ》 設定からすると、如何にも感動物といった趣きの映画なのに、その内容はコメディという意外性が面白かったですね。
涙を誘うようなシーンもあるにはあるのですが、それよりも笑いの比重が大きかったように思えます。
自分としては、冒頭の悪戯電話を楽しんでいる主人公達に対して今一つ感情移入が出来ず、どこか冷めた目で画面を眺める事になってしまったのが残念。
そして、そんな悪戯電話の件以上に呆気に取られたのが、終盤におけるヒロインの台詞。
「(彼と不倫したのは)病気を使って同情させるからよ」
って、おいおいそこまで言うか、と衝撃的でしたね。
主人公が一途な愛情を抱いている存在なのだから、きっと優しい女性なのだろうな……という思い込みを、木っ端微塵に粉砕された形。
とはいえ、元々家庭がありながら不貞を働いていたカップルなのだし、そのくらいの落としどころが丁度良かったのかも知れませんね。
主人公も彼女も聖人君子ではなく、むしろ駄目な人間なのだというのが、何となく可笑しかったです。
道徳的には正しくなかったとしても、憎めない愛嬌のようなものを感じさせてくれました。
この映画は全編に亘ってそういった肩透かし感が強く「病気で余命僅かな主人公」「元妻との恋の再燃」というテーマを扱っておきながら「主人公の病気はアッサリ治るので、感動的な死など迎えない」「元妻とヨリを戻す事もなく、再び別れる事になる」という、王道の展開を踏まえた上での真逆な結末を迎えているんですよね。
結局、主人公は病気の告知を受けて自分の一生を見つめ直す前の段階と、何も変わっていないように見える。
ただ一つの大きな違いは、心を通わせられる友達が一人出来ただけ……という、静かな変化を描いた結末は、とても好みでした。
アダム・サンドラーと対になる、もう一人の主人公を演じたセス・ローゲンの存在も良かったですね。
彼の目線からすれば「一度は歩みかけたコメディアンとしての成功の道を閉ざされた後に、再び立ち上がって歩み始める」という、大いに青春を感じさせるエンディングにもなっています。
色々と意外な展開で驚きましたが、偶にはこんな風に「王道」「お約束」を逆手に取った作品も悪くない……と、そんな風に感じさせる一品でありました。