1.『悪党パーカー』シリーズは過去に何度も映画化されているものの、私が観たのは『ペイバック』のみ。そんなわけで、本作については必然的に『ペイバック』との比較となってしまうのですが、今回の映画化企画にはハードボイルドな空気が足りていないという印象を受けました。。。
この企画の骨子は「毒をもって毒を制す」という点にあり、仁義を守らない小ズルい悪党を、本物の悪党パーカーが度胸や腕っ節を武器に容赦なく追い詰めるところに面白さがあると思います。実際、『ペイバック』ではたったひとりでヤクザの事務所に乗り込み、大親分と対峙しても一歩も引かない主人公の姿が痛快だったのですが、一方で本作の主人公は身分を偽って隠密行動をとり、素行も控えめなので、犯罪者を主人公にしたことの意義が薄くなっています。探偵や元刑事を主人公にしても似たような映画が撮れてしまうのです。また、敵となる悪党たちの悪ぶりが足りていないし、彼らの後ろ盾となっているヤクザがいかにヤバい連中であるかも伝わってこないので、この内容に求められるスリルやカタルシスも不足しています。。。
さらには、主人公達の行動原理が不可解なので、彼らへの感情移入も困難です。南部の成金だと思っていたパーカーが、実は犯罪者であることを知った不動産営業のレスリー。普通ならマッハで警察に駆け込むところですが、彼女はパーカーの前に再度姿を現し、「土地勘のある私が仲間になるから、分け前をちょうだい」と言い出します。いくら金に困ってても、素人はそんなことしないって。そして、そんな怪しい提案を受け入れ、「よし、明日連絡する」と言ってアッサリと仲間にしてしまうパーカー。序盤では、周到な計画の下に動くプロの犯罪者というキャラ付けがなされていたはずなのですが、これでは考えの足らないバカです。そもそも、素人が数分調べただけでバレるような偽装をやってる時点で一流の犯罪者とは言えないわけで、この脚本は設定を煮詰めきれていません。。。
本作で褒められる点は、役者がしっかりとしていたことでしょうか。ステイサムはさすがのB級番長ぶりですが、意外だったのは、アラフォー・バツイチ女を演じるジェニロペのハマり具合です。10年前は女王様だったジェニロペが、ヒロインにすらしてもらえない世にもあんまりな中年女役を熱演。執拗に繰り返される尻ネタも悲しい笑いを誘っています。本作のジェニロペは必見です。