1.《ネタバレ》 こういったジャンルの品で「犯人の正体が不明」のままで終わるパターンは、意外と多いように思えます。
ただ、不明のままでも納得させられる作品と
「結局、犯人の正体って何? 目的は?」
と疑問符が残ったままになってしまう作品がある訳で、本作は残念ながら後者であるように感じられました。
理由を分析してみるに「こいつが犯人じゃないか?」というミスリードが多過ぎたのではないでしょうか。
こんな事を言い出すと、疑り深い自らの性根が嫌になったりもするのですが、まずヒロインが怪し過ぎました。
シングルファザーの主人公にも、その息子にも極めて親切であり、美人。
そして列車の中で出会ったばかりにも拘らず、主人公に積極的にアプローチを掛けてきて、恋仲となる事が暗示される……とくれば「彼女が一連の事件の犯人」「そうでなくとも、何らかの目的があって主人公に近付いた訳アリの人物」と推理してしまいます。
そして、彼女以外にも色々と胡散臭げな人々が登場する訳ですが、それらは全て、主人公の仲間となってくれる良い人達ばかりだったというオチなのです。
結局、冒頭にてチラッと画面に映ったヘルメット姿の人物が「正体不明の犯人」のまま、映画の最後まで居座る形となったのですよね。
的外れな考えをする自分が愚かだったというだけなのですが、どうしても肩透かし感が強かったです。
作中にて主人公達が
「きっと犯人は列車を暴走させて、乗客を道連れに自殺するつもりだ」
と動機を推測するのですが、これに関しても明確な答え合わせは行われないまま。
もっと終盤で明かされたのであれば(まぁ、そういう動機も有り得るか……)と納得出来たかも知れませんが、情報として作中で提示するのが、あまりにも早過ぎたように思えますね。
それ以外は動機に関する描写が無いまま、どんどんストーリーが進行して、結局そのまま終わったものだから(えっ? まさか、あれが真相だったの?)と戸惑うばかり。
結局、この映画は犯人だの動機だのといった謎解きではなくて
「個性豊かな乗客達が、如何にして暴走する列車から脱出するか」
を描く事がメインだったのでしょうね。
いがみ合っていた乗客達が、一致団結して事態の解決に当たる姿は、上述のような疑心暗鬼の雰囲気もあっただけに、意外性があって痛快でした。
また、息子役の少年も可愛らしく(この子を守ってあげたい…)と感じさせられる存在であるだけに、その父親である主人公に、素直に感情移入出来た点なども良かったと思います。
燃え盛る先頭車両から主人公が脱出してみせるという、アクション要素の強いクライマックスの後に、ハッピーエンドを迎えてくれる点なども好み。
そちらの方面から集中して観賞すれば、きっと楽しめる代物だったのだろうなと、勿体無く感じられる映画でした。