1.《ネタバレ》 華のある役者が出ているし、テンポは良いし、見せ場は面白いし、さらっと見られる娯楽作としては仕上がっているものの、鑑賞後には何も残らない薄味映画でした。
本作の主題は信頼関係であり、主人公は親分と慕うベテラン犯罪者からは「女を信用するな。犯罪者はたいてい女で失敗する」と言われ、他方で彼女からは「あなたの親分はあなたを利用するだけして、必要なくなれば捨てられるわよ」と言われます。主人公がどちらを信じるべきなのかという葛藤を描けば面白いドラマになったと思うし、両者に対して疑心暗鬼に陥ればサスペンスとしての一山も作れたと思うのですが、そのどちらにも振り切れていないために主題がほぼ死んでいます。さらには、「愛こそ正義」という甘々なオチの付け方も犯罪映画には似つかわしくなくて、もうひと捻り欲しいところでした。
芸達者なユアン・マクレガーは今まであまりやってこなかった役を無難にこなしているものの、実年齢の割に若々しさの残るマクレガーには終身刑を食らうほどのベテラン犯罪者に必要な凄みや、内に秘めた凶暴性が不足しており、もし主人公が彼を裏切れば何をされるか分からないという怖さが表現できていません。ブレイク直前のアリシア・ヴィキャンデルはかわいくて綺麗でおっぱいまで出してくれるので最高なのですが、こちらも裏社会に生きる女特有の手強さを表現できていません。若い観客向けのライトな犯罪映画を目指していることはわかるのですが、怖い人が一人も配置されていないのでは雰囲気が出ません。