1.《ネタバレ》 ネタバレの有無については有にしてますが、配給会社の意向としてはネタバレ厳禁って事で、大事な部分についてのネタバレはしません。と言っても、この映画をネタバレ無しで語るのはなかなか難しいワケで・・・
まず、宣伝にある「誘拐された女子高生3人VS誘拐した男23人格」、ここが実は、あまり面白くありません。
監禁モノとしては『羊たちの沈黙』や『アリス・クリードの失踪』『10 クローバーフィールド・レーン』などの映画が思い浮かびますが、それらに比べるとサスペンスはユルユルな状態で、よくもまあこれだけ緊迫感の無い監禁モノが撮れるなぁ、ってヘンな感心しちゃうレベル。それは、どういう場所に監禁されているのかが一応隠し事になっているがゆえに監禁場所の構造や位置関係を明確にできないっていう理由もあるからなのですが、それ以前のところで、脱走を試みる部分や犯人との駆け引きが、バラバラ散りばめてあるばかりで単発の上げ下げ状態で、ちっとも映画全体の大きな流れになっていっていない、っていう。
また、犯人の人格がいっぱいあるがゆえに、犯罪者としての恐さが全く定まらない、弱い人間、優しい人間な部分がサスペンスとしての足を引っ張っちゃってます。
その23人格部分、マカヴォイの演じ分けは上手いとは思いますが、内面で23人がどう世界を作っていて、その関係がどのように動いてゆくのか、その深いところまでを想像させてくれるレベルではないんですよね。そこって結構重要なハズなのですが、シャマラン監督はそこにはあまり興味がないようで。
シャマラン監督作品らしさというのは一応しっかりと刻まれています。監禁や多重人格はシャマラン監督が一貫して描いてきた「見えない事の恐怖」に直結していますからね。でも、よくある素材である事によって他の作品との差別化がシャマラン監督お得意の「衝撃のラスト」程度でしか誇示できていないのが残念な感じで。
そして、一応の衝撃の展開の後の衝撃のラストなんですが、それは世界を矮小化させる、むしろガッカリさせるモノだったような気がして。そっち方面でなく、監禁された3人の女子高生の方に、もっと映画の気持ちを向けてあげて欲しかったなぁ。