2.《ネタバレ》 1979年版しか観たことなかったのですが、このたび初めて1931年版を鑑賞。あごを引いて前屈みな今のボクシングスタイルと違って、あごを上げて後ろにのけぞるような古いスタイルが映し出される1931年ものということで、無意識にもハードルを下げている部分はあるかと思いますが、ウォルター・マッソーを渋くワイルドにしたようなチャンプは、ジョン・ヴォイトよりも雰囲気があると思います。子役も、甘ったるい顔で「泣かせてみせます」オーラ全開のリッキー少年より、こちらの作品の子役の方がかなり好感持てます。ボクシングの試合シーンはサイレント時代のような早回しの映像になって滑稽。この時代の役者さんは役作りの為に本物に近づくような訓練とかはしなかったんでしょうね。人を殴るという場面がある映画の多くは、実際にはパンチは当てずに役者が打たれた演技をして、あたかもパンチが当たったかのように錯覚させるわけですが、この作品では、顔面を連打されるチャンプの顔のどアップを見せる為にコマ撮りみたいなシーンがあったのが面白かったです。画面を静止してみたらグローブがちゃんと顔面に食い込むようなショットにしていて、当時ならではの努力を感じました。1979年版では、リッキー少年の、涙の鼻づまりで連呼される「チャ~ンプ」にはイラッとするものがあったため、ラストは冷めてましたが、本作のラストは鑑賞価値があると思いました。別れた奥さんがチャンプを少しも見舞うことなく少年を抱き上げて去っていきますが、子守唄の曲で締めくくったのが印象的で、なんとなく「父親の役目」「母親の役目」など考えてしまいました。