1.初のボニーとクライドを題材にした作品、(ラングにとって)初のフィルム・ノワールが強いアメリカ期の作品と、初づくしの本作。一度定められた運命を前にどうすることもできない2人の姿を、メディアや民衆を批判しながら描いている。新聞屋はあらかじめ3つの一面記事を用意していて、いずれも大衆を煽ることだけを目的としている。ヘンリー・フォンダの死刑が決まると、ニヤけ顔で死刑の紙面を指差す下品さ!2人に退去を命じる宿主や、ちっぽけな理由でヘンリー・フォンダをクビにする社長、冤罪をなすりつけるガソリンスタンドの店員など、2人と敵対関係にある人物は総じて下品に描かれている。米国に渡ったラングは終戦までプロパガンダ映画を作り続けるのだけど、本作と『激怒』は少し毛の色が違う。標的はナチスではなく、メディアと大衆である。話はそんなに面白くないけど、本当に暗闇と霧の使いかたが上手い監督だ。ヘンリー・フォンダが脱獄するシーンの緊張感はラングならでは。