1.《ネタバレ》 塩田監督と今や引っ張りだこの鈴木一博氏が組んだ作品。尾野真千子さんという女優はムーミンぽくて可愛らしい。声がやや常盤貴子似である。役柄は、ふてぶてしく性格の悪いどうしようもない女である。同僚を泣かせて、時計渡して「これあげるから許して」と言う。その欠落感が彼女たる所以で、どんどんギプス女に入れ込んでいく。そのキャラクター設定は良い。佐伯日菜子さんは、幻惑する女を嬉々と演じてるが、やや演技(表情)過剰の作為が見られる。でも彼女の目力はいい。テンポの遅い展開を弦音が強いコミカルな音楽で引っ張っている。水槽の金魚はそれだけで絵になる。割れた水槽もGOOD。女→女への執着と関係性の面白さは同じ鈴木カメラマンの「ココロとカラダ」(安藤尋監督)の方がやや上か。でも嫉妬の果てに尾野が佐伯に出す脅迫状のくだりから面白くなってくる。サスペンスの度合いが後半強くなるが、低温モードはそのままである。いいシーンがある。脅迫状を出した尾野が佐伯の部屋に様子を見に行くと。佐伯は胡弓を弾いている。その隣には封が破かれた脅迫状。佐伯は「今日は帰って」と言う。尾野は佐伯の表情と共にその脅迫状を見て微妙にほくそ笑む。すると、その微妙な表情の変化を佐伯がまばたき一つせず、凝視している。その目にはぞっとするものがあり、かなり効いている。そして、ラスト。最後のギプスと包帯に巻かれた二人は、情けなくも、滑稽である。