2.《ネタバレ》 平日の最終回とはいえ、470人キャパの有楽町の劇場に20人ほどの観客しかいないという惨憺たる光景を目の当たりにするとは思わなかった。
観客の中には『「マッハGOGOGO」懐かしいな』と楽しそうに語っていたおじさんもいたが、自分は生まれてこのかた、元ネタを見たことは一度もなく、元ネタの情報を一切知らずに鑑賞した。
原作を知らず、ゲームもやらないのでこんなことを言っていいのか分からないが、誰も見たこともない世界・映画を構築しようという高い理想を感じられるようにはなっていると思う。
問題点はあるが、製作陣は一切妥協をせず、批判を恐れずに、真摯な姿勢で努力している跡が窺われる。
画面だけ見ていれば、それなりに楽しむことはできるだろう。
ただ、その世界観に上手くハマれず、乗り切れなかったというのが正直なところ。
やや、自分と映画の間に温度差を感じてしまった。
「この人たち、なぜ一生懸命走っているのだろうか?」「この人たち、なぜ戦っているのだろうか?」「主人公、なぜ家を出ようとしているのか?」と感じる冷めた自分が劇場にいた。
なんでもかんでも詰め込もうとして、まとまりが悪くなってしまったのが問題か。
世界観は豊かなのだから、子ども達が楽しめるようにもっと単純でも良かったのではないか。
「レースを金儲けの道具にしている悪い奴を倒す」「レースは八百長ではない」というだけでよく、株価がどうのこうのとか、ビジネスがどうしたとか、買収とか、訳の分からない、どうでもいい背景などは要らない。
余計なことを描きすぎたために、「スピードの兄が自分の身分を隠してまで本当にやりたかったこと」なども上手くは伝わってこず、「家族の繋がり」などの重要なメッセージも伝わりにくくなってしまった。
余計なストーリーだけではなく、余計なキャラクターも多いので、各キャラクターが生殺し状態に陥っている。
本作の描き方では、真田広之、RAINの扱いに合格点を出すことはできないだろう。
肝心のレーサーXですら、あの程度の出番では足りない。
「マトリックス」と同じく世界観を広げすぎたために、上手く収束させることはできなかったようであり、反省が活かされていないようだ。
優れたクリエイターではあるが、もっと単純にまとまりよく物事を伝えることができないと優れたストーリーテラーとはいえない。