1.《ネタバレ》 ディストピアものというより、あくまでサバイバルドラマの側面が強い。別荘で父親を射殺された母子三人が次の列車が来るまで駅舎で待機する。まだ子供の姉弟は極限状況下の大人達の獣性と醜さをまざまざと見せつけられていく点はハネケらしいが、ここにきて変化球を投げつける。自分を犠牲にして醜悪な世界を救おうとする弟の行為に、見張りをしていた男が止めに入って抱きしめる。家族の前で外国人に暴力を振るった男に似合わない、今までになく優しい言葉。あまりにも無力で根拠のない希望を語りかける。ラストカットの車窓は現実か妄想かは定かではない。それでもハネケは人間を信じているのだろう。絶望ばかりを描いているわけではなく、人間の"可能性"に観客が気付いて欲しいことを。