1.《ネタバレ》 結論を抜きにすれば、全体的にはそれほど悪くはない映画とは思う。(賞を取りたいという)関係者の熱意やマジメさは十分に伝わってくるレベルの高い仕上がりにはなっている。
問題は、ベンの選択に対して賛同や共感ができるかどうかだろうか。批判を承知で映画を作っているとは思うが、「他人の人生を不幸にした者には、ああいう形でしか救いがない」というオチでよいのかどうかは疑問に思う。もし、そういう人が本作を観たとすると、どういう気持ちになるだろうかと考えてしまう。
映画というものは、観た者に対して、希望や夢を与えてくれるものではないか。
確かに、ベンのような気持ちになり、誰かを救いたいという気持ちは分かる。
彼のプランも十分に理解はできるが、エミリーとの出会いにより、ベンの心に何らかの変化が生まれて欲しかったところだ。
自分を犠牲にして誰かを生かすよりも、“償い”の方法には別のものもあるはずだと。
エミリーと接することで、人を救う方法には様々な形があるということを。
病気に苦しむ誰かの人生を助けようとして、助けようとしている誰かに逆に助けられていると気付く。そういうものが人生ではないのだろうか。
ベンの閉ざされた心を、死に迎えつつある病人のエミリーならば開くことはできたはずだ。仮に、エミリーが死ぬことになっても、エミリーはベンを助けることができれば、人生の意義を見出せたのではないか。ベンは愛する人を含めて多くの人を救い、助かる見込みのない愛する者を救いたいという想いを成就させたものの、彼の人生はある意味では絶望のままで終わってしまうこととなる。
どんなに酷いことをした者であっても、人生は続いていくものではないか・・・。
親友がいて、弟がいて、愛する者がいながら、一人で背負った苦しみから、誰も彼を救うことができなかったことが、何か寂しさを感じる。
気になったのは、交通事故を起こした者が考えることは「自分を犠牲にして誰かを助ける」ということよりも「もう二度とクルマには乗らない」ということではないか。
暴れたら事故が起きそうな大型犬をクルマに乗せることが、果たして事故を起こした者のやることだろうか。
映画自体はマジメには作られているが、こういったことも含めて根本的な部分で本作には相容れないところがあるので、やや評価を下げたい。
それにしても、序盤のアップの多さはなんとかならないものか。