18.《ネタバレ》 主人公が窮地を脱するのが「間違い電話の録音」「盗み聞き」などの偶然によるイベント頼みである事。
「自分を陥れようとした悪女に証拠を突き付けて、見苦しい言い逃れをする相手に勝利する痛快さ」を二度続けて描いている事。
上記が難点となっているのですが、それを差し引いても面白い映画でしたね。
何といっても、配役が絶妙。
マイケル・ダグラスは如何にも好色そうで、周りから「セクハラしたんじゃない?」と疑われてしまうのも納得だし、それだけに彼が「家族」を選んで誘惑に打ち勝つ姿が光って見えました。
デミ・ムーアの方も性的魅力に満ちていて、中身は「嫌な女」なのに、観ていて全く不快に思えないから不思議。
本作の主人公からすれば紛れもない悪女な訳だけど、本人なりに「男性社会で苦労して出世してきた」という矜持のようなものはあったんだろうな……と感じさせる辺りが、役者さんの上手さなのでしょうね。
そもそも会社側が隠蔽工作の為、主人公をクビにしようと画策していた訳だし、彼女の誘惑は「彼と再び関係を結んで弱みを握り、仲間に引き込んで守ってあげる」のが目的という、歪んだ愛情表現だったのかも知れないと考える事も可能だと思います。
作中のあちこちにて「女性が世に出て働くようになった事を警戒する男性」が描かれているのも、特徴の一つですね。
「その内に精子を提供する者だけが少数残されて、残りの男は滅ぼされる」なんて際どいジョークが飛び出すのだから、当時の世相なども窺えるようで、興味深い。
女性が働いて出世するのが当たり前になった現代すると、何だか滑稽にも感じられるのですが、それでも当人達にとっては深刻な問題だったのだろうな、と思えます。
男性側の目線で描かれた作品であり、偏った世界観となってしまいそうな中で「最終的な勝者となったのは、副社長に就任した女性」となっている辺りも、上手いバランスだったかと。
結局、主人公の出世は叶わずに「Friend」の正体が明かされるというオチについては(まぁ、そんなものか)という程度で、さほど感銘を受けなかったのですが、その後に「家族からのメール」で〆る構成には、唸らされましたね。
思えば事前に「どんなに悪い噂を立てられても、子供達は父親の無実を信じている」という伏線が張られていた為「パパ、早く帰ってきて」というメッセージと、手描きのイラストの威力が倍増しているという形。
出世する喜びなどではなく、家族と一緒にいられる幸せを感じて笑う主人公の姿が、実に恰好良かったです。
「セクハラ問題」「会社内の権力闘争」と、ドロドロした内容が続いていただけに、気持ちの良いハッピーエンドでした。