3.《ネタバレ》 園子温監督らしくない作品で、肩透かしを喰らった感が残る。
どぎついほどの描写や問答無用に巻き込んでいくような展開は影を潜め、じっくりと正攻法で描いた社会派ドラマになっている。
過激で異常ささえ覚える演出を抑えたのは、原発事故がもたらす世界自体が異常だからか。
生きた証を捨てることができずに避難勧告に応じない夫婦。
認知症の妻と銃を手にした夫の最後の会話は、長年連れ添った絆が見えて胸に迫るものがある。
悲しい選択ではあったが、それしかないとの思いも伝わる。
その夫婦に苛立ちをぶつけていた若い職員が、次第に共感を示す過程が興味深い。
原発事故から生じたさまざまな不協和音に、事の重大性や罪の深さを考えさせられる。
ただ、この作品で描かれたことはドキュメンタリーを凌ぐかというとそうは思えず、改めて映画でやる必要があったのかどうか。