1.《ネタバレ》 余計な説明は一切なしでいきなり核戦争という景気の良い導入部が終わると、以後の舞台は狭苦しい地下室のみ。閉鎖空間での心理サスペンスに主眼が置かれた作品なのですが、全体の構図はよく考えられています。舞台はマンハッタンの高級マンションであり、その住民達はバリバリのホワイトカラー。対して、(きっかけは意に反していたとはいえ)彼らをかくまってやるのは、そのマンションの地下室に住みこんで働いている貧しい用務員さん。常日頃、身の回りの世話をしているにも関わらず住人達からはロクに挨拶もされず、名前も顔も覚えられていない用務員さんが、金持ちやエリート達の生命を握るという捻じれた階級闘争の構図となっているのです。そして、物語はどんどんおぞましい方向へと転がっていくのですが、「他人に対してもっとも惨い仕打ちをしたのは誰だったのか?」という点についても、本作特有の結論が準備されています。これはかなり優れた企画だと思います。。。
問題なのは、脚本力や演出力が上記の企画意図に追い付いていないということ。まず、時系列の整理がヘタくそで、ほんの数カットで何十日も話が飛ぶこともあれば、逆に、いろんな展開が詰め込まれてさぞや時間が経過したのだろうと思いきや、じつは数日の話でしたということもありました。閉鎖空間に長時間閉じ込められた人間のストレスがテーマとなっている作品だけに、劇中の時間経過は作品の重要なファクターであるはず。にも関わらず、それを観客に伝え損ねていることは問題だと思います。また、設定のディティールにもあまりこだわりがなく、大人8人が何カ月も生存するために必要な水と食料、長期間の自家発電を行うための燃料とは膨大な量になるはずなのですが、あの地下室にそれだけの備蓄ができるようには到底思えません。さらには、相当な量となるであろう排泄物、おまけに生存者達は何カ月も入浴できず地下室の衛生状態は最悪になることは容易に考えられるのですが、そういった想定しうる設定が掘り下げられていないので、映画全体から説得力が失われています。あと、序盤に登場した謎の集団は一体何者だったんですか?彼らに連れ去られた少女はどうなったんですか?謎の集団から奪ったはずのライフルやテーザー銃が中盤以降、劇中から姿を消すのはなぜですか?設定を投げっぱなしにした製作側の姿勢には感心しません。