3.《ネタバレ》 非常にまじめに作られた印象はあるが、どうしても『インサイダー』と比較してしまう。メアリーの情報提供者に対する責任の負い方は、ローウェル・バーグマンのそれとは比べようもないほど軽い。自分を信用して危険なネタを打ち明ける一般人を、己の首をかけて守り抜こうとするローウェルの仁義は本当に素晴らしかった。
残念ながら、メアリーからその感動を得るのは難しい。話したくないと渋る情報提供者の口を、無理やりこじ開けさせ、後にその証言の価値が疑われると、後手後手に回りながら、何とか修正を図ろうとする。その辺の動きが見苦しくて、残念だった。彼女は一体何をもって、「あなたを必ず守ります」と確約していたのか。一情報提供者に対して誠実な対応を怠るのであれば、彼女は何に対して誠実さを捧げるのだろう。些細なことを調査委員会がつつきすぎると言うが、私は共感できなかった。放送前に、メディア側で是と非のチームを作り、資料を突き合わせ、充分双方で意見を戦わせるべきだった。それをしてもいないのに、「○○ありき」で証拠を全力で探していれば、それに添えられそうなネタが上がってきても不思議はない。情報提供者との中途半端な対応に加え、些細なこと、つまり「詰め」をないがしろにする彼女に、誠実さを感じることができない。
そうした違和感を覚えつつラストを迎え、ダン・ラザーが降板のため大物アンカーらしい華ある幕引きとなったのを見て、さらにがっかりした。やはり個人的には『インサイダー』の寂しく苦いラストの方が、深く心を打つ。