3.ロドリゲス監督はこの映画の制作資金を得るため、怪しい新薬テストの実験に参加し、1ヶ月間隔離されている間に脚本を書き上げたという。機材もタダ同然で借り、友人や知人に出演を頼み込み、監督、脚本、撮影、編集、その他やれることはすべて自分でこなし完成された映画である。
良い映画とは何なのか。
これは完全に持論だが、大作でも自主制作でも、制作費が安くとも、ヒットしなくとも、賞に無縁でも、いや、たとえつまらなくとも、誰からも評価されなくとも、平均点が1点でも、そんなことが映画の価値を決めるわけではないんじゃないのか。
むしろ映画の価値に差などはない。
面白い映画とつまらない映画はあるが、良い映画と悪い映画は無い。
映画に正解など無いのだから、最終的には作り手が表現したかった事、語りたかった事、見せたかった事、それをどれだけやり抜けたか、だれも判ってくれなくとも胸を張って自分の映画を愛していられるか、それこそが映画が存在する意味なのだと今は思う。
この「エル・マリアッチ」からはロドリゲス監督の、映画への情熱がムシムシと伝わってくる。自分の作品への愛がギラギラと反射してくる。カメラも、フィルムも、こういう男に使われる事を心底喜んでいる気さえしてくる。
こういう人間がいる限り、面白い映画が尽きる事は無いんだろうな。
そして、映画を観ているうちに、自分でもやってみたくなるから面白い。
これが錯覚なのかどうかは知らないが、恐らくみんなちょっとはそう思うんじゃないか。
取り敢えず次の休み辺りに友達に電話して、「ハリウッドに行かねぇか」と口説いてみることにした。