1.モーツァルトの歌劇の中で「フィガロの結婚」や「ドン・ジョヴァンニ」よりさらに優れ、彼最高の作品のひとつと言ってもまちがいない。歌と台詞の両方からなるジングシュピールという形式だから、優れた歌唱力と演技力の両方を要する歌劇である。さらに演出のおもしろさがあり、歌劇にまったく縁のない人もすぐにとけ込めるほどの親しみやすいものとなっている。私は今までにもテレビや舞台で何回か見たし、全曲版レコードも持っている。さてこの映画、イングマール・ベルイマンということで大変期待したのがやや期待はずれ。今まで見た「魔笛」より優れているという点はほとんど見あたらなかった。舞台をそのまま映画にしただけというか、衣装や演出などかなり地味、魔笛独特のおもしろさや幻想感もほとんどなし。その上歌唱陣も超一流とは言い難く、時々写る観客が返って邪魔に思える。