1.《ネタバレ》 アンナは貴族の妻として平穏な暮らしを送っていた。愛する息子にも恵まれていた。運命のいたずらで、そんなアンナが青年将校ブロンスキーと恋に落ちる。初めて知った燃え上がるような恋。アンナは全てを捨ててブロンスキーの元へ走る。だがその代償は大きかった。夫は離婚してくれず、息子とも会えない。ブロンスキーの子を宿すが流産して、生死の間をさまよう。アンナの夫の寛大な態度にショックを受けたブロンスキーは拳銃で自殺未遂する。二人は出奔し、ヨーロッパを旅行したが夫を裏切り、子供を残したきた思いが心に影を落として楽しめない。帰国したアンナは夫に内緒で息子に会うが、夫に見つかり、離婚は絶対しないと宣言される。二人は社交界からも見放され、孤立を深める。精神的に追い詰められた二人の心は離れて行った。アンナは二人が初めで出会った駅で自ら電車に轢かれ死亡する。
◆アンナは優雅で美しく、誰にも優しく寛容で、何自由なく暮らしている貴婦人でした。それが不倫の恋に落ちます。総てをなげうっても悔いの無い情熱的な恋でした。しかしすべてがうまくいかず、アンナは顔に悲愴さを漂わせ、皮肉屋で、打ち解けない女になります。そしてブロンスキーの心が離れていったのと悟った彼女は死を選ぶのでした。二人だけでなく、アンナの夫の苦悩も描かれています。他に、ブロンスキーに婚約破棄させられた娘が幸せな結婚生活を送る事。不倫は秘されているうちは明るい噂話に過ぎないが、大っぴらになると非難を招く事。アンナは兄の不倫の仲裁にやってきてブロンスキーと出会うが、そのときは不倫をたしなめる役だった事等皮肉たっぷりです。汽車の事故を最初に見せる伏線もうまいですね。ドラマティックな展開はあるのですが煽情的に描かれておらず、あっさりと進み、見ていて少々退屈ですが、文豪の長編をダイジェストで見せてくれるだけでもありがたいと思いましょう。ビビアンとローレンス・オリビアの実生活での「ダブル不倫、結婚、破局、精神を病むビビアン」もこんなだったのかという穿った見方もできます。ある意味貴重かもしれません。