68.《ネタバレ》 破天荒なラブコメ作品。
この頃のファレリー兄弟作が好きな人にとっては、後の作品は「良い子ぶってる」と思えるだろうし「これぞファレリー兄弟の真骨頂」と本作を賛美する人の気持ちも、分かるような気はしますが……
自分としては「後の飛躍を感じさせる、粗削りな初期作品」って印象でしたね。
決して嫌いではないけど、完成度は低かった気がします。
主人公のテッドが小説家志望とか、冒頭に出てきたルイーズの存在とか、色んな設定やキャラを活かしきれていない気がするし、あれもこれもと面白そうな要素を詰め込んだ結果、粗が目立つ形になってるのが、良くも悪くもアマチュア的。
序盤の「ナニをチャックに挟んでしまった」展開も痛々し過ぎて笑えないし、最後の終わり方も唐突過ぎて(雑だなぁ)と感じちゃいます。
自分は本作を何度か観返してるんだけど、その度に序盤で(うわ、痛そう)と引いちゃうし、最後には(すっごい雑な終わり方)と呆れてるんだから、これはもう筋金入りというか、この二点に関してだけは、とことん自分に合わないポイントなんでしょうね。
でもまぁ、やっぱり嫌いじゃないというか……むしろ好きな映画なんです、これ。
そもそも監督がファレリー兄弟で、主演がキャメロン・ディアスとベン・スティラーという自分好みな布陣なんだから、嫌いになれという方が無理な話。
メリーに言い寄る男共を多数用意して、群像劇として描いてるにも関わらず、主人公のテッド以外が酷い奴揃いで「誰がメリーと結ばれるか」みたいなドキドキ感が無い(ブレット・ファーヴは例外的に聖人として描かれてるけど、実在人物である彼がメリーと結ばれるはず無いと観客は分かっちゃう)辺りとか、映画としては致命的な欠点だと思うけど……
ベン・スティラーという名優がテッドを演じ(こいつとメリーが結ばれなきゃ駄目だ)と思わせてくれるお陰で、その辺も気にならなかったです。
あと、一番大事なポイントとして「作中で色んな男に言い寄られるくらいに、メリーは良い女である」って事に、しっかり説得力があったのも素晴らしいですね。
これはもう脚本とか演出以上に、キャメロン・ディアスという存在ありきの、力業みたいなもんだと思います。
「ヘアジェル」で髪が逆立ったメリーの姿を、下品にし過ぎず、可哀想にもし過ぎずに(この子、可愛いな)と笑える形で演じられるのって、彼女だけじゃなかろうかって思えたくらい。
それから、本作って下品なギャグが目立つけど、実は凄く道徳的な話でもあると思うんですよね。
メリーの弟のウォーレンに関しても、知的障碍者である以上、映画としては「天使のように良い子」として描かれるのがお約束なのに、本作では全然そんな事無いんです。
テッドの顔に釣り針を引っかけても「僕じゃない、テッドが悪いんだ」と言ったりして、むしろ嫌な奴というか、悪い子として描いてる。
でも、最終的にはテッドに心を開いて、耳に触れられても怒らない場面を見せたりして、可愛いとこあるじゃないかって思わせたりもする。
つまり「基本的には悪い子だけど、それなりに可愛気もある」という、非常にリアルなバランスなんですね。
その辺り「障碍者だからといって、特別扱いはしない」「障碍者は皆して善人だなんて、そんなの馬鹿げてる」っていう作り手のスタンスが窺えて、自分としては好ましく思えました。
誠実なテッドがメリーと結ばれ、嘘ついて彼女に言い寄ってたパット達は振られちゃうのも、如何にも道徳的というか、童話的。
「好きな映画が一緒」って事に浪漫を感じる身としては、本当は好きな映画でもないのに騙してメリーに言い寄るパットって場面が一番抵抗あったし、その後の顛末にも大満足。
やっぱり、映画オタクとしては、映画の好き嫌いでは嘘ついて欲しくないです。
最後は人が撃たれて、悲劇的な幕切れのはずなのに、エンドロールでは皆で唄って賑やかに終わるのも、何だかアンバランスな魅力があって良い。
ファレリー兄弟の映画って、観た後は大体明るく楽しい気持ちになれるんだけど……
それは本作に関しても、例外ではなかったです。