9.《ネタバレ》 シリーズ28作目。きちんと出るには出たけど、あまりに本作に絡まない紙風船の小道具っぷりよ。
寅の夢にマドンナ2人が出てくるのは、シリーズ初かな?
ガードが硬そうで、いったん心を許すとノーガードな愛子が可愛い。そんな愛子に、相部屋なのに変な気を起こす気配も感じさせない寅の落ち着き具合。この2人はそれはそれでイイコンビ。マグロを抱えた兄の登場が、これまた勢いがあって好き。
一方でマドンナの光枝は可愛らしい大人の女。それでいてどこか影があって。どうして歳の差もあるテキ屋の常三郎と一緒になったんだろう?って女性。だけどなんか、この夫婦に説得力を感じてしまった。
旅館で働き出した光枝。寅と話してる最中、ガラッと窓を開けて掃除する、同僚の視線に背を向ける光枝。察した寅が「何か辛ぇ事ないのか?」に「大丈夫、仲居みたいな仕事は前にやったことあるから」って。あぁ、この人同僚なんかと上手くやれないタイプなんだ。だから夫の仕事仲間の愚痴も出るんだ。
駅前の別れのシーン。光枝の方から話を振ったくらいだから、寅の回答次第だったんだよな、ここは。病人相手だから適当に相槌打ってた事にする奥手の寅と、それ聞いて安心した事にする人付き合い下手な光枝。なんでか常三郎を悪者にして話をまとめる二人。常三郎はこの不器用な二人が大好きだったんだね。
失恋に追い打ちを掛けるように、不採用になった寅の乾いた笑いが忘れられない。
何より全編通して流れる笛の音のテーマが物悲しい。でも嫌いじゃない一作だなぁ。