6.《ネタバレ》 決して退屈な映画ではないし、俳優の演技もよかったのだが、なんとも納得いかないのが「世間」との関わりがまったく描かれていないこと。
兄の死後、弟が兄嫁といっしょになる、というのは、韓国社会では道徳的な非難は免れないと思うのだが、その部分はまったく切り捨て。兄は家具作家としてそこそこ名のある人物のようだし、弟のほうも、カーレーサーで、世間的に無名の人物ではないようなのだが、兄の死後、それまでまったく別の職業についていた弟が、兄とそっくりの作品で展示会をやるという不思議に対して、なんの反応もないのである。
親類縁者、友人はまったく出てこない。彼ら3人の世界に割り込んでくるのは、弟を慕っていた女性だけで、彼女も弟との愛しか眼中になく、「世間」の役割は果たしてない。ドラマだと、そのネタで20話くらいは簡単にひっぱれそうだけどなー、なんて思うのは、わたしが韓国ドラマを見すぎなのか。
メイクなどの助けをまったく借りず、別の人物を表現するというのは、俳優にとって腕の見せ所だと思うが、イ・ビョンホンはらくらく合格。色男なだけじゃなく、うまいねー。イ・ミヨンは前半の幸せいっぱいの表情と、後半のすがりつくような瞳の対照が印象的。イ・オルの包容力の表現もすばらしかったし、俳優陣がいいだけに、設定の甘さがつらい。