8.《ネタバレ》 シリーズ26作目。たまたま『学校』を観た直後。『黄色いハンカチ』以前から構想があったという夜間学校映画の、まさに試作品のような本作を観られたのは、なかなかなめぐり合わせ。
諏訪家がやっと手に入れたマイホーム。タタミ1畳分くらいの狭い庭、窓を開けると手が届きそうな隣の家、言葉を選んで褒める寅が素敵。そして「お兄ちゃんの部屋」は泣けるわ。いつまでも叔父叔母夫婦の家に頼ってないで、兄妹で独立したかまどを持とうとするさくらの考えと、義理の兄と妻の絆の強さに協力を惜しまない博。寅が悩んだ末に2万円も包んだ、嬉しい気持ちが伝わってくる。それに対しお釣りって…それは寅が怒っても仕方ない。
セブンイレブン。私も近所にセブンが出来たときのことを覚えてます。スプライトとかがデザインされたアメリカンヨーヨーが売ってましたね。店内に流れる長渕の順子。ついに寅さんが私の記憶にある時代に追いついたわ。
ちなみにキャンディーズは私が物心つく頃には解散してました。マドンナすみれは、寅のテキ屋仲間の娘。年齢の差もさることながら、仲間の娘ということもあって、最初から恋愛対象ではなく、親子のような構図です。うっかりお風呂を覗いてしまうところなんて、まさに娘と父親のあるあるネタ。
すみれの突然の朝帰り。「だって私、結婚するのその人と」まっすぐ寅の目を見るすみれに、それ以上怒れなくなって二階に上がってしまう寅。あぁ、娘を男に取られる父親の気分。今まで若いマドンナと青年の恋愛を応援する回はあっても、父親の立場でマドンナを見守る回は無かったと思います。
最後の入学願書もホロリと来ました。さくらと博はマイホームを持ち、満男は10歳になり、テキ屋仲間は死んで、その娘は結婚を考えている。'80年代に入り、寅なりに“俺もどこかからやり直さなきゃ”って思ったからなのかもしれません。
そうはいっても、あの2万円が源から借りただけってオチは、何歳になっても子供のままな寅をよく表現していました。
私は、前作が最終回でも良いと思ったくらいだから、本作はまさに『男はつらいよ・後編』のスタートです。
寅と同年代のマドンナばかりでは客層も固定されることを考えると、この路線変更はアリだと思いました。