1.主人公が田舎へ帰ったときの朝の場面、ふたつの窓とその間に置かれた椅子に、朝日が射し込んでくるところが美しい。思えばこの監督、「地下水道」の暗さや「灰とダイヤモンド」のポロネーズの場など光に敏感なところがあって、社会派のわりにはちゃんと画面づくりに気を配ってくれるところが嬉しい。ただ本作の場合、お話はかなり図式的。主人公たちだって、なんとか没落を食い止めたい、というあがきがあり、それなりの止むに止まれぬ立場ってのがあったと思うんだけど、それが出てなくてただの金の亡者みたいになってしまっている。ユダヤ人の描き方が悪いせいもあるだろう。いいところとしては、工場主が袋の山に埋もれて死んでいるところをちらっと見る女性労働者の表情、ああいうふうに過不足なく描いたときに、一番効果が上がるんだ。