1.内田吐夢監督による大川橋蔵主演の時代劇。内田監督の時代劇は「宮本武蔵」や「大菩薩峠」で重厚なイメージがあるが、この映画は幻想的なファンタジーとなっていて正直言ってよくこんな異色作を「宮本武蔵」シリーズの真っ最中に手がけたなという思いもあるが、橋蔵と狐の嵯峨三智子の夫婦のシーンでいきなり舞台劇のようになるとか、俳優に面をかぶせたり、アニメを合成して狐を表現しているなど演出が面白い。(アニメを合成したシーンはこの当時の邦画では珍しいのではと思う。)後半は民話にありそうな展開で多少ベタに感じなくもないが、それでも見ごたえのあるものになっている。双子の姉妹と狐の化身の三役を演じている嵯峨三智子が印象的で、特に狐の化身である葛の葉の切なさをうまく演じている。山田五十鈴に似てると思ったら親子なのね。内田監督の映画ではあまり知られていない映画っぽいけど思ったより随分楽しめた。でも、やっぱりこの監督は(あんまり見てないのだが。)本作よりも「宮本武蔵」シリーズのようなリアルで重厚な作品のほうが好きかな。