1.いま大島作品で一番再見したい気分が高まっている映画。60年代後半の新宿の風俗をドキュメンタリー的に見なおしたいって気持ちも多分にある。時代を離れて批評するのではなく、時代とともに一度流されてみようとした映画だから、こう時がたってこそ、タイムカプセルを開けて見るような意義が生まれてくるフィルムかもしれない。一番記憶に残っているのは、夜の紀伊国屋のシーン、本を買えない女店員(?)の抑えられていた望みなのか、読みたい本の多数の「声」たちが、じわじわと滲み出し重なってきて、夜の書店のなかにこだましていくところ。この監督、ムッツリと俺は硬派だって顔していながら、けっこうリリシズムを不意に溢れさせるところがあって、そこが私は好きだ。唐十郎がかわいい。