8.《ネタバレ》 観賞中(これはもしや「デクスター」の元ネタになった映画なのでは?)と思ったのですが、制作年度はこちらの方が後なのですね。
事前情報として「主人公の設定が斬新」と絶賛する評論家さんの言葉を仕入れていたりもしたのですが、その方は「デクスター」を知らなかったのだと思われます。
自分も、元ネタを知らずに同じような事を書いているのかも……と考えると、何だが気まずい思いに包まれたりもしました。
まぁ、そういうのは極力気にしないのが一番だなと、自らに言い聞かせたいところです。
主人公の別人格を、違う役者さんが演じている事。そして、その別人格との会話シーンにて、画面上は普通に喋っているのに、第三者には全く気付かれない(つまり会話は、あくまでも主人公の内面で行われている)事など、やや分かり難い点があるのは気になりましたが、総じて面白い作品でしたね。
こんな事いけないと思いつつ殺人衝動に負けてしまう様が、それこそアルコールやらギャンブルやらショッピングやらの誘惑に負けてしまう「普通の人」とも重なるように描かれており、本来なら理解出来ないであろう「殺人鬼」に感情移入させる事に成功しています。
正に「殺人依存症」といった感じであり、殺害後には性的快感を得ているという際どいシーンもあるのですが、それでも下品な印象は受けないのは、主演のケヴィン・コスナーの貫録ゆえなのでしょうね。
彼が紳士を演じてみせれば、こんな事をやっていても紳士に見えてしまうという形。
墓場で「ミスター・スミス」と会話する姿からは、一種のピカレスクロマンのような魅力さえ感じられました。
である以上、そのクオリティのまま綺麗に完結してくれたら良かったのですが……どうも未解決な部分が多いというか、続編を意識したかのような終わり方となっており、もどかしさも残ります。
結局、主人公の娘はどうなってしまうの? とか、あの女刑事に電話した以上は再会した時に疑われるんじゃない? とか、色々と気になる点が多いのです。
最後の「夢オチ」に関しても、少々安易に感じられるというか、これ一本で終わらせるなら「娘に殺されるオチ」の方が、まだ綺麗に纏まっていたんじゃなかろうかと思えました。
こういった終わり方の場合、やはり作品の満足度という点では不利ですね。
ケビン・コスナー本人はといえば
「当初は三部作の予定だった」
「ただ、僕自身は一作目で満足している」
「この作品だけでも自然な完結をしていると思う」
と語られているそうですが、自分としては二作目も三作目も観たくなってしまうような映画でありました。