6.《ネタバレ》 文明崩壊後に、親子が二人で南を目指して彷徨うだけの映画。
悪人から逃れるために隠れて、食べ物や物資を探し求めるだけで目立ったストーリーがないだけに、好き嫌いが分かれそうな作品に仕上がっている。
素晴らしい作品とは思うが、正直言って自分の好みの作品ではなかった。
ただ、本作に描かれているメッセージは深い。
生き残るために他人を襲い、あるいは人間ですら食べるということが当たり前の世界の中で、善という“心の火”を灯し続け、その精神を息子に叩き込もうとする父親の姿が心を打つ。
文明が崩壊して秩序が崩壊して混乱した世界になっても、人々が“心の火”を灯すことで秩序が回復できるのではないかと、かすかな“希望”が感じさせる。
唯一の“希望”が自分達を撃つための銃弾という設定も泣かせる。
平和だった日常生活が随所に回想として挿入されているが、何でもないようなことが実は幸せだったと思わせる。
ラスト間際の父親の幸せそうな夢を見たときに、「悪夢を見る者は生きる希望を失っていないから」という言葉を思い出して、彼の死期を悟ることができるようになっている。
本作中においては、文明が崩壊した理由も明らかもされず、最後に楽園に辿り着くわけでもない。
そういった映画らしい展開を無視する辺りも本作の個性ともいえる。
むしろ、そういったお約束を描かない方が本作にはプラスといえるだろう。
“心の火”を灯した親の子ども達が出会うことが、自分には希望と感じられた。