3.《ネタバレ》 まさかの恋愛映画でしたね。
冒頭、主人公が恋人と思しき女性を射殺するシーンが描かれており、色恋沙汰を排したハードボイルドな作風かと思いながら観賞していただけに、意外な印象を受けました。
作中に映し出される風景は美しく、それらを眺めているだけで癒されましたし、観賞中「大人」の雰囲気に浸る事が出来る映画というのは、決して嫌いではないです。
ただ、上述のように予想以上に恋愛要素が色濃くて、戸惑う面も大きかったですね。
何と言っても、冒頭のプロフェッショナルとしての主人公の姿と、イタリアの町を訪れてからの主人公の姿が、どうにも一致していない印象を受けてしまいました。
途中、ヒロインの事を疑って殺そうとする展開になるも、結局は悩んでいる内に「彼女は無実だった」と気が付くオチになったりして、何だか肩透かし。
じゃあ最初のスピーディーな射殺っぷりは何だったのか、とついつい思ってしまいます。
冒頭の彼女は恋人ではなく、自分が勝手に勘違いしていただけかも知れませんが「何で今回は対応が違うの?」と思ってしまい、最後までその違和感が拭えませんでした。
それだけ彼女の事を愛していたんだろう、と納得さえ出来たら楽しめたと思われるだけに、非常に残念。
せめて、もっと年数を経過させて、冒頭のシーンを遠い過去の出来事として描いてくれたのならば、印象も違ったかも知れません。
主人公が黙々と腕立て伏せを行ったり、銃を組み立てたりする場面などは、とても良かったですね。
クライマックスの、小銃に仕掛けを施しておいた事が分かるシーン。
そして、無事に助かったかと思われた主人公が、実は撃たれていたと分かるシーンなども、衝撃的でした。
熟成された苦味と同時に、どこか煮え切っていない甘味のようなものを残している。
そんな一品だったと思います