1.高良健吾、男前やなあ。ダメ男なのに皆から愛される男、愛されるからダメになってゆく男がぴったりの男前。これまで女を撮り続けてきた廣木隆一であるが、女はやめて男を撮ったほうがいいと断言する。原作はメロドラマの構図を持ちながらもメロドラマをことごとく否定してゆく展開を見せるが、この映画はちょっとくさすぎるぐらいドラマチックな展開を見せる。喫茶「アルマン」のマダムの成れの果てが一番わかりやすい。アルマンというのは「椿姫」で娼婦が愛する男の名前。マダムはメロドラマの主人公でいたいのだ。しかし現実はそうはいかない、というのが原作であり、「椿姫」以上のドラマを用意するのがこの映画。そのあまりにもクサイ展開の非現実性が「映画」によく合っているような気がした。原作に無いバイオレンス描写もまた安易かもしれないが「映画」向きだと言える。新宮市という古(いにしえ)の町に派手な男女がいることの好ましい違和感とそこで展開される「一昔前」的なクサいドラマがまた相性バッチリ。