1.《ネタバレ》 この映画、結構好きです。
好きなんだけど……それを差し引いても欠点の多さが気になっちゃいましたね。
金持ち連中が自慢のタネを得る為、節税の為にレジャー感覚で軍隊に参加するという「富豪部隊」の設定は面白いのに、それを活かし切れていない。
例えば冒頭、如何にも「普通の戦争映画っぽい場面」から始まって、それがあんまり面白くなかったりするもんだから、気勢を削がれる形になっているんです。
しかも、後に映画のラスボスとなる相手が冒頭にて主人公に一度倒されていたりするもんだから、緊迫感も失せてしまうという形。
これなら冒頭の部分はカットして、主人公が「富豪部隊」の護衛役に雇われる場面から始めた方が良かったんじゃないかな、って思えます。
主人公が「伝説の軍人」って割には「弾を避ける為に、ジグザグに走って逃げるべき」ってアドバイスを武器商人からされたり、内通者がいると分かっているのに基地を移動させようとしなかったりと、その能力に疑問符が付いてしまう辺りも残念。
物語を面白くする要因なはずの「内通者の正体」に関しても、どうも扱いが下手だった気がしちゃうんですよね。
作中で特にヒントも出していないから「犯人探し」を楽しむ事も出来ないし、犯人のキャラ付けに関しても「嫌味な金持ちその1」という没個性的な代物でしかなかったので「良い奴だと思っていたのに、裏切り者だったのか……」という意外性も無し。
そんな裏切り者を殺す際に「クソ銀行屋め」と言わせたりするのも、如何にもって感じがして、ノリ切れませんでしたね。
この手の「皆もサブプライムローン問題には怒ってるでしょ? だから映画の中で銀行屋を懲らしめておいたよ」というパターンは流石に食傷気味で、ちょっと興醒めしちゃったくらいです。
そんな欠点の多さに比べると、良かった部分を探すのは大変だったりするのですが……その数少ない「良かった部分」が、かなり自分好みなんですよね。
主人公が戦友と交わす会話「国のために戦ったのに報われない」「金のために戦おう」にはグッと来ちゃったし「今はトレーラーハウス暮らしの無精髭な主人公が、実は伝説の軍人だった」って設定も、男の浪漫をくすぐるものがあります。
ナイフを用いての決闘で、敵にトドメを刺すシーンも恰好良く決まっていたし、水上バイク同士を衝突させて爆発させるとか、アクション映画として見栄えの良い場面がしっかり詰まっているのは、文句無しで長所だと思いますね。
ラストシーンにて、花火を打ち上げたり、争いの種となっているレアメタルを海に投げ捨てたり、水鉄砲で子供達と遊んだりしている光景を描き「島を独裁者の手から解放した」喜びを感じさせて終わる辺りも、ハッピーエンド感があって良かったです。
そういった具合に、確かな魅力も秘めている映画であるだけに(ここは、もっとこうすれば良かったのに……)って、歯痒くなっちゃいますね。
せめて「富豪部隊」の面々が善意に目覚めていく流れだけは、もうちょっと丁寧に描いて欲しかったです。
例えば、事前に島民の子供との交流を描き、この子達を救いたいと思って金持ち連中が立ち上がるとか、そういう展開にしておけば、もっと感動出来たろうし、胸を張って「隠れた傑作」と言えた気がします。
「クリスチャン・スレイターが主演で、彼の恰好良い場面がちゃんとある」というだけでも、自分にとっては「良い映画」なのですが……中々他人には薦めにくい一品でありました。