3.《ネタバレ》 アカデミー助演男優賞に輝いたディアハンターは未見ながら、キャッチミーイフユーキャンで主人公の父親役を演じたクリストファー・ウォーケンを見ただけで深い精神性を表現できるすごい俳優だと思いました。当方、大のクラシック音楽ファンでもあります。で、結果から申し上げますと、一挙両得を狙った映画館での鑑賞はわたしとしては見事に期待はずれでした。焦点が四重奏者とその中の夫婦の娘にバラけてしまい、チェロ奏者兼音楽学校講師のウォーケンの深みのある演技も彼が登場する(わたしとしては)数少ない場面でしか見ることができませんでした。わたしを含めた観客がエンドロールの結構後のほうまで残っていたのは音楽が思っていたほど堪能できなかったからその埋め合わせだったと思います。病気のせいで弦を正確に押さえられなくなった、つまり人前での演奏に耐えることができなくなった苦悩はビオラと第二バイオリンの夫婦のすれ違いの比ではないと思うので残念です。わけがわからないのは四重奏者夫妻の娘と第一バイオリン奏者との恋愛で、先生に「君には弦楽四重奏はまだ早い」と言われて落ち込むわけでもなく、先生の芸術性に感服して好きになってしまったわけでもないらしく、しかもいい年したおっちゃんの第一バイオリン奏者が教え子の部屋に忍び込むなんでますますわけがわからなかったです。かたやウォーケンが演じるチェロ奏者は演奏者としてのキャリアは終わっても音楽教師として生きる道が残っているわけで、このあたりをもっと描いてほしかったです。四重奏者夫妻が自分の娘の英才教育を独身のオタクっぽい同僚に任せたのも不自然で、どうせ同僚に任せるのなら技術面の指導は別楽器なので期待できなくとも音楽性抜群かつ既婚者のチェロ奏者に任せればこんな変なことにはならなかったのにと、変な感想で締めくくらせていただきます。あと、ニューヨークの美しい冬景色をたっぷり堪能しました