21.《ネタバレ》 数年かけて、十七、八回観た結果、やっと自分の意見がまとまってきたので、ここに記す。
最初の30分のツカミが素晴らしかった。
しかし、ある意味、とても残念無念な映画だった。
砂嵐で農業が出来なくなった。だから、新天地を目指す。
この設定部分だけで、有名な物語を下敷きにしていることは明らかだった。
バカバカしいので、いちいち言いたくないのだが、読者の理解のために(ああ、めんどくさい)明らかにすると、それは「怒りの葡萄」である。
そして、最後の30分(二回目のトリップシーンの後)で、この前提とも言える設定が台無しにされるのだ。
とてもじゃないが、ダークナイト・ライジズの監督が作ったとは思えない。
ところで、現代の映画は大体三パターンの終わり方を用意しておいて、もっともウケのよかったパターンを採用すると聞いている(つまりはマーケティングだ。そして、その結果、映画から作家性が失われた。言ってみれば企画のみがあって、意思がない)。
ここからは俺の想像なのだが、
その結果採用されたのが、このパターンだったに過ぎず、それは監督の意にそぐわないものだったのではなかったか?
というのも台無し内容が、主人公クーパーが結局、「神の視座」に立てないまま終わってしまうからである。そして、親子愛のごとき話しにすり替えられてしまうからである(現代人はハッピーエンドでなければ気が済まない。俺はこの事実から、現代人は不都合な真実を直視できるだけの知力胆力を奪い去られた後だと分析している)。なんだ、この庶民ウケ狙いのバカバカしさは?
呆れ果てて物も言えねえわ。
なお、冒頭30分のツカミのうち、もっとも秀逸だったのは、保護者面談でのやりとりだろう。
クーパー:月面着陸は嘘だと?
女教師 :素晴らしい政府のプロパガンダでした。
(そりゃ、娘が保護者面談の直前、父ちゃんにお願いするはずだわ。先生とケンカしないで、と)
なぜJTNewsの人はこういう基礎的な部分に誰も反応しないのかね。
ま、北朝鮮や中国の脅威とか、コロナなる疫病が実在するとか、タバコには健康被害があるとか、フツーのヒトは政府のプロパガンダを真に受けてる事実があるからね。(フェイクニュースの最大の出処は国家である。このシンプルな真実は、玉音放送を直に聞いた世代なら全員が、体で知っていた)
そして映画の中では更に一歩進んで、プロパガンダだったから信じないようにしましょうねというプロパガンダが実施されている。
いやはや、さすがだわ(二重の意味で)。