1.《ネタバレ》 リュドミラ・パヴリチェンコといえば切手にまでなったソ連の超有名女性スナイパー、その彼女の戦争をフィクションを多々交えながら描いています。考えてみれば、戦場に女性を実戦兵士として送り込んだのはソ連だけ、それだけ独ソ戦のときはスターリンも切羽詰まっていたということでしょう。ドラマとしては戦場から離脱した後使節の一員として米国に送られ、その時のルーズベルト大統領夫人エレノアとの交流がカットバックされる構成になっています。語り口としてはまあオーソドックスで、戦場でも彼女の狙撃活動よりも上官との色恋や女性戦友との交流がメインという印象です。イーストウッドの『アメリカン・スナイパー』との大きな違いは彼女が狙撃という人を殺める行為に対して何の葛藤も持っていないことで、大義の前では意外と女性の方が疑問を持たないという傾向があるんじゃないでしょうか。旧ソ連の国策映画ほどじゃないにしろ、独ソ戦(ソ連の呼び方では『大祖国戦争』)に絡んでは戦争に疑問を挟むような映画の撮り方は、現在のロシアでもまだまだタブーなのかもしれません。