3.《ネタバレ》 原作はかなり昔に読んでいる。全体テーマとしては、独裁制と共和制とどっちがいいか考えよう、というようなことを10巻も使って延々と問いかけるようなものだったが、とにかく読んで面白いのは間違いなく、また登場人物への好感度が読むほどに高まる中毒性の高いシリーズだった。
OVAを見ていた皆さんには珍しくもないかも知れないが、自分としては映像化されたものを今回初めて見たので非常に興味深い。さすがに動画の質はよろしくないが、全体的には結構あか抜けた感じに見えており、艦艇デザインがこれで合理的かは別として、格好良さを優先しない形状に見えるのはリアリティがなくもない(帝国軍の方が若干優美?)。宇宙空間で音がするのは昔からの慣例なのでいいことにして、戦闘が激しくなると爆発音なども消えてしまって背景音楽が前面に出るのは斬新である。曲目としては、クライマックスに向けて盛り上げるための選曲もなかなかいいが、個人的には北欧びいきなので序盤でカール・ニールセンが出て来たのは少し嬉しい。
戦闘の仕方としては平面感覚から完全に脱却しているわけでもないが、艦がわざわざ上?を向いて砲撃したり、モニターが3次元的に表示されているなど一応は全方位の戦闘を意識したものになっている。ただ終盤で、ラインハルトの乗艦(劇中で名前が出ないがブリュンヒルトか)の腹にヤンの乗艦がくっついていたのは、艦底?が不用心になっているという前提があってのことだろうから不自然ではある。またモニターのせいもあって図上演習のようでもあり、実物の躍動感が不足していた感じもなくはない。
ほかドラマ部分では会話が少々くどい印象もあり、必ずしも激賞できるものではないが、宇宙モノのアニメといえば小学生向けで済まされていた時代の常識を振り切った出来になっていたとは思われる。
なお余談として、上には媚びて外づらを良くして下を踏みつけにするタイプの人間は世間に時々いるわけだが、そういう者が人生の最後を迎えたとき、いま生きている自分を知る者の多くが自分を憎んでいる、という状況をどう思うかと考えることが最近ある。この映画でキルヒアイスが「…助けられた数百万の将兵の感謝に比べれば…」と言っていたのは当然、後のローエングラム朝の創始につながる台詞だろうが、もっと卑俗な庶民の人生に照らしてみても結構共感できる言葉だった。