2.《ネタバレ》 “巨匠”と呼ばれる様になってからのヴィスコンティ映画はあまり自分は好きじゃない。彼の晩年の作品は大芝居を工夫のないカメラワークで延々と見せられるというイメージが強いし、民主党の大嫌いな某大物政治家が最近どういうわけか『山猫』を演説で引用していることを知ったことも一因かな。でもほとんど遺作と言っても良い本作にはさすがにヴィスコンティの執念が伝わってきます。ヘルムート・バーガーの演技はルードヴィヒの霊がとり付いたかの様な迫力で必見です(そういや最近お姿をスクリーンで見かけませんが、どうしてるんでしょうか)。全篇にヴィスコンティの貴族趣味に満ち溢れていて、民衆や大衆が歴史もののくせに全く画面に登場しないという徹底ぶり(バジェットの関係かな)。そしてロミー・シュナイダーの“シシー”にはただうっとりさせられるばかりで、さすが“シシー”は10代からの彼女の当たり役だけのことはあります。“赤い貴族”と呼ばれたヴィスコンティですが、マルクス主義者のくせに頽廃の甘美な魅力をこよなく愛しており、そこが頽廃を誰よりも鮮やかに映像化するくせに本当は頽廃を嫌悪していたフェリーニとの大きな違いでしょう。 まあお暇なときにはこの4時間の頽廃の極北を味わってみるのも良いんじゃないでしょうか。