2.《ネタバレ》 人と野生動物の関係についての大前提。それは“動物に対して、人間はいつだって自分たちの論理を押し通している”ということ。有害鳥獣を駆除することも、ハンティングに興じることも、動物園をつくることも、絶滅危惧種を保護することも、全て人間側の都合です。“野生動物のために”とか“地球のために”とかいう掛け声も、つまるところ人間が快適に(精神的な安らぎも含めて)生きていくためのもの。人間は、そういう強い立場にいます。少なくとも今のところは。この事を自覚する必要があると思います。それは覚悟と責任とも言えます。命を奪うことが出来る側が負うべきもの。主人公夫婦のうち、夫の方にはこの覚悟が伺えます。だから共感できます。では妻の方はどうでしょう。彼女は、「エルザは自然に帰すべき。エルザは自由を望んでいるはずだ」と主張します。この言い方はズルイ。そもそも“彼女が”希望してエルザを手元に置いたはず。だのに、いつの間にか主語がエルザにすり替わっています。これは人と動物との前提を覆すこと。そして自己責任の回避に他なりません。(もっとも、この事は夫によって看破されます。)“ライオン”と“大自然”が事の本質を分かり難くしていますが、ようするに“家で飼えなくなったペットをどうしますか?”という話。別の飼い主を探すのか、何処かに捨てるのか、あるいは殺してしまうのか。本作はハッピーエンド。エルザはきっと幸せになったのでしょう。この夫婦は責任を果たしたと言えます。ただ、それは結果論であることも忘れてはいけないと思います。強者であることを自覚すること。そして謙虚であること。人が野生動物と付き合うための心構えだと思います。