1.欲望にかられた心無い人間たちにより破壊されたジャングルを、今度は疫病が襲う。ジャングルの王たる白いライオン・レオの妻ライヤも疫病に命を奪われ、さらには娘ルキオまでもが病に侵される。そこにやってきた「心ある人間」たるヒゲオヤジ氏、ルキオに注射を施し、さあこれで明日には熱も下がるだろう、と。逆に言えば、注射していきなり元気になる訳でもなく、薬が効くまでには時間がかかる、要するに、人間と動物たちの間に信頼関係を生み出すためには相応の時間がかかる、ということでもあるのだなあ、と。まあ、そう思ったんですけれども、本作はその「時間」を描くこともなく、いきなり場面は翌朝に飛んで、ルキオの快癒を描いてしまう。本当に人間と動物たちは信頼しあえるのか、という「不安の一夜」を経てこそ、相互信頼という奇跡も光ると思うんですが、エラくアタリマエの事として描いたもんです(この間、ハム・エッグ氏側の描写もほったらかし)。まあ、この作品では「ジャングル大帝」の大きな軸をなすレオの前半生に触れていないもんで、レオの人間に対する立ち位置も描きづらいところではあるのでしょうが…。あと、中盤のルネの冒険を描く部分もちょっとテキトー過ぎないかい、という不満もあるんですけどね。でも、多少強引でもどんどん話を進めていっちゃう、この勢いの良さってのも、ひとつの魅力ではあります。そして結局のところ、最大の見どころはやはり、ハム・エッグ氏の濃いキャラと、それを支える談志師匠の名演でしょうか。