7.絶対面白くはないと思うけど、それほど悪くはないと思う。
しかしどう考えても何かが足りない。
その原因が、ストレートで特に捻りもない脚本なのか、初監督ということで気合だけ入りまくって空回りした演出なのか、監督の空回りの気合に押されて、さらに空回りし続けた俳優の演技なのかはよく分からない。
自分が演出するのなら、肝心なポイントとして、やはり彼の告白が本当なのか作り話なのか、観客に悩ませるような演出・脚本の方が良かった気がする。
この映画では殺し屋だったことが疑いようのない事実のように描かれ切ってしまっている。
チャックバリスという人物について良くは知らないが、「ゴングショー」のようなものをプロデュースした彼独特のネタなのか、それとも事実なのか、観客によって見方が違うような映画を創れれば演出家としては一流となるだろう。
次に、この映画のように仮に事実として描くとしても、やはり一人の孤独なオトコの人生の描き方としては不充分だ。
特にラストのゲーム。銃で頭を撃ちぬかないゲームの勝者として本物の彼が紹介されたような演出であったが、果たして彼は勝者なのだろうか。
卑劣なテレビ文化を産んだ文明の破壊者としての描き方も中途半端なら、バリモアとの愛の描き方も不充分だ。
面倒な恋愛を避け、深い愛に陥らないよ性格となった原因である家族や母の影響も上手く描けていないと感じる。
殺した責任や殺されるプレッシャーなど様々なものに追い詰められ精神的におかしくなっていく
様を描くタイミングが遅いし、その後すぐにロバーツとの毒入り飲み物入れ替えエピソードに
移るのもなんとも言えないやり方だ。
ラストの銃のゲームは面白いエピソードなので、ラストは本物のチャックバリスがこめかみに銃を当てるところでエンディングを迎えた方が良い。
彼の人生をこの映画で見て、銃の引き金を引くのか、引かないのかを、この映画を見た観客に決めさせれば良いのである。
その判断をさせるだけの充分な素材を観客に与えることができれば演出家としては成功だろう。