2.《ネタバレ》 マリリン・モンローが「演技派」への転身を図った第一作目という事で、彼女を語る上では外せないタイトルだと思います。
そんなモンロー当人の演技だけに着目すれば(頑張っているなぁ……)と、微笑ましい気持ちになったりもするのですが、映画全体から受けた印象となると、中々に厳しいものがありましたね。
まず、この映画の中心はモンロー演じるチェリー(=シェリー)ではなくて、ドン・マレー演じるボーな訳ですが、彼がどうにも感情移入を拒むような主人公像なのです。
根は悪い人間ではないのでしょうが、余りにも傍迷惑だし、現代の目線からすると思い込みの激しいストーカーにしか見えないのが困りもの。
そんな彼が殴られて、打ちのめされて、ようやく改心し、最後にはモンローと結ばれるというハッピーエンド構成なのですが、その「彼が反省して生まれ変わる」までが長過ぎるように感じてしまいました。
確認してみたところ、全95分の内、雪の中での殴り合いに突入するまでに70分以上が経過している計算なんですね。
個人的には、このイベントをもっと早い段階に持って来た方が良かったんじゃないかな、と。
まるで尺が足りないかのように、終盤にて「主人公が改心する」→「ヒロインと結ばれる」という出来事が立て続けに起きた印象を受けてしまい、今一つ納得出来ないものがありました。
上述のように「前振り」部分が長過ぎたんじゃないかと思えてしまう作品なのですが、終わり方は爽やかで好み。
子供っぽい主人公の面倒を見続けてくれた、親代わりのような年長の親友が「わしは邪魔だ。お前には彼女がいる」と身を引いて、バスに乗り込む二人を送り出す場面は、グッと来るものがありましたね。
相手を思いやる気持ちに欠けていた主人公が、ヒロインが凍えてしまうと気遣って、自らの上着を脱いで羽織らせてやると、ヒロインもそれに応えて、一度は勝手に彼に持ち出されてしまった緑のスカーフを、今度は愛情込めて彼の首に巻いてみせるシーンなども、負けず劣らず良かったです。
面白かったかどうかと問われたら、頷きがたいものがあるけれど「良い映画だった?」と問われたら、迷った末に頷いてしまう。
そんな映画でした。