10.《ネタバレ》 女性ジャーナリストに起こった悲劇、その意味を問いかける作品。・・・なのかな、との予備知識ありでの鑑賞。
予想通り、かなり『強い』作品ではあります。
ですが、この映画では、その『強さの源』が見えてきません。
あるいは、冒頭で、注射器で遊ぶ幼い子供達のシーン。麻薬漬けになっている少年・少女のエピソード。この冒頭のシークエンスから、ヴェロニカのジャーナリストとしての正義感を感じるべきだったのでしょうか。
自分の身や、大切な家族を危険に晒してまで、なぜ麻薬の記事を書くことに固執するのでしょうか。
『子供達の未来を救いたい。』『麻薬の売人は許せない。』理由は何でも良いのです。何でも良いから、ヴェロニカの行動の原点にあるもの、それを映画で見せてほしかった。
でなければ、ただ意地になってムキになっているだけの人に見えてしまうことすらあります。
にしては、『ここで屈したらジャーナリズムの敗北よ。』という信念を掲げておきながら、記事を書くことより訴訟を起こすことを選んだりします。なんだかよくわかりません。
また、周囲の人間の感情の機微も、抑えすぎている感があります。鑑賞者の判断にゆだね過ぎているような気がします。旦那、母親、刑事、上司、誰も彼もが優柔不断に見えてしまいます。
『実話』だからこそ、ただ事実を流すだけではなく、そこに生きる人たちの『思い』を見せてほしいのです。
そこに作成者の価値観や解釈が入っても構いません。心の描写が中途半端なバッドエンドストーリーを見せられても、口の中に苦い味わいが残るだけです。
ラストのナレーションで、ヴェロニカの死に大きな意味があったことは、わかります。
ですがこの作品に関しては、あまりにもラストのナレーションに頼りすぎている気がします。
この作品を見てよくわかりました。私は『実話』が好きなのではないようです。『実話ベース』の『映画』が好きらしいです。